インタビュー

社員表彰の記念品をプロデュースする社長に聞いた9つの質問

社長インタビュー「社員表彰の記念品にたいする情熱」

「今日はスーツなんか着ちゃったよ。いつもは普段着だけどね。」

そう言って快活に笑うのは社員表彰や周年記念のカップ・表彰楯・記念品をプロデュースしている「表彰ぷらざ」の内藤社長。

「表彰ぷらざ」は銀カップやトロフィーをはじめさまざまな銀製品を製造している内藤銀器製作所が運営する法人向けサービスです。注文が入ってからデザイン・製造まで全てを自社で担います。そのため、内藤社長のもとには午前中から電話や来客が絶えません。

ものづくり全般において言えることですが、ひとつの品物をつくるまでにはいくつもの工程を経ています。お客さんの要望を聞くことからはじまって、提案、デザイン、作業工程というように。

そうした一つ一つに徹底的にこだわりぬく社長の仕事に対する向き合い方や今後の目標についてお聞きしました。

 

「提案力で勝負したい。お客さんとの丁寧なヒアリングが肝。」と語る内藤社長。

―こうした業界に関わるようになったきっかけをおしえてください。

家業だったのです。それに成績があまりよろしくなかったから雇ってくれるところもね。(笑)この業界は、とりあえず10年といわれます。10年やっても広く浅くしか覚えられないくらい覚えることがたくさんあるということです。僕の場合は大学2年からここでアルバイトをしていました。

 

―お仕事をされるうえで最も力を入れているところはどういったところでしょうか。

うちは、「提案」に力を入れています。具体的にはどんな大きさが良いか、どんなデザインが良いかってことですが、それが分かるにはまず、ヒアリングです。お客さんが求めているものをわからないことには何もはじまりません。

例えば、ホテルに置くものであればあまり場所をとらないようにコンパクトサイズが良いかもしれないし、逆に、ゴルフの大会で使うトロフィーなら大きくて見栄えのするものが良いかもしれない。そういったことはケースバイケースだから一概にこうとは言えないところもありますね。

 

表彰することの意味について語る内藤社長

―実際に内藤社長がした提案をおしえていただけますか。

以前、日本脚本家連盟からお話をいただいたことがあって、その時、僕が提案したのは銀製の“しおり”と“ルーペ”でした。

物を書いたり読んだりする人たちが集まる業界ですから、それを意識してそうした提案をしました。

これは例えばの話ですが、サッカーのトロフィーによくみられる3本の柱をサポーター・選手・Jリーグに見立て、その上の頂点に立つという意味合いを持たせたることもあります。ようするに、ものづくりにはコンセプトが必要だということです。

 

表彰することの意味とは? 感謝を形にすることで期待できる効果

―表彰というと例えば、会社で行われる社員表彰などですが、表彰することの意味は何でしょうか。

単純に、誰かから評価されれば嬉しいはずですが、日本人は評価されたことを周りに自慢しませんね。良くも悪くも控えめというか…。表彰は、評価を形にするという点で大きな意味があります。

経営者側の視点からすると、皆の目に見える形で1人を評価すれば、他の社員に争意識を芽生えさせることができます。対する表彰された社員は満足度やモチベーションがアップするでしょう。お父さんやお母さんが家にトロフィーを持って帰ってきたら、子どもは「すごいね!」というに違いありませんし、それを喜ばない人はいません。

 

―トロフィー以外の銀製品をつくることもあるのでしょうか。

もちろんありますよ。うちの場合は食器が主です。スプーンやフォークといったカトラリーや酒器、またキーリングをつくったこともありました。あるお客さんから古くなったスプーンの修理を頼まれたことがあって、その方は「スプーンについた傷は皆、私の思い出です。」とおっしゃいました。使えば使う程、味が出てますます手放せなくなるような魅力が銀製品にはあるんですね。

 

銀製品はこうして作られる。作業工程とその魅力に迫る

―表彰プラザを運営する内藤銀器製作所は60年、銀製品をつくり続けている会社ですね。そこで、銀製品がつくられる工程についてお伺いしたいと思います。銀製銀といっても様々あるかとは思いますが、トロフィーを例にとってお話しいただけたらと思います。

内藤社長にお話しいただいた工程は以下の通りです。

 ・銀の塊を板にする
     ↓
 ・コンパスで印をつけて丸く切り出す。
     ↓
 ・絞り作業。
     ↓
 ・なましていく作業(金属を熱して伸ばすの繰り返し。3回ほど行う。)
     ↓
 ・磨き作業とバフ研磨
     ↓
 ・取っ手などの部品をつけて銀メッキ。

その後、バフ研磨をその都度行いながら表面をきれいに仕上げる。

注文から一連の作業を終えるまでに短くても一カ月はかかります。今、受けているものは二か月を見ていただいています。早く簡単に作ろうと思えば、絞り作業を3回に分けるところを1回することもできます。

でも、そうしてつくられたものはカップの厚みが均等ではありません。腕のいい職人が作ったものは端から真ん中までがすべて同じ厚みです。良いものかそうでないものかは、触ればすぐにばれてしまうのです。

―トロフィーにも先ほどご紹介いただいた食器類にも共通しているのは後々まで残る品物であるということです。銀製品がそこまで愛されるのはどうしてでしょうか。

レガシーということでしょうか。(笑)日本は消費社会だから発展してきたところもありますが、遺す文化も素敵です。ひとつのものに愛着を持ち、代々受け継いでゆけるのは幸せなことです。子どもが生まれた際、銀のスプーンをプレゼントする場面などを想像するだけで、幸せそうな笑顔が目に浮かびます。そうした笑顔を創造できる現場にいられる我々も本当に幸せだと感謝しています。

 

ものづくりの醍醐味とは?お客さんとの良い関係の作り方

―製造業という大きな枠でお伺いしますが、ものづくりに関わってきてよかったと感じるのはどういった時でしょうか。

お客さんが喜んでくれるのが最高です。ありがとうの感謝の気持ちはすごく大切で、お客さんからのありがとうは私たちからのありがとうでもあります。どちらが上でも下でもなく、お互い尊敬できる関係を築くことが重要です。

―最後に、今後の目標をお願いします。

お客さんと直接つながれる機会をもっと増やしていきたいです。お客さんとの良い関係作りには、お客さんとの距離が近いことが大事な要素の一つです。間に何人も入るとエンドユーザーさんに私たちの思いも伝わりにくいですし、逆もしかりでエンドユーザーさんの思いも伝わりません。

内藤社長は過去に作ったトロフィーやその他の銀製品の写真を見せてくださいました。
ダイナミックなデザインのカップや社長室に飾るという繊細な銀でできた花、プロポーズに使用されたバラの花など、その全ての品物には注文した人の思いと製造に関わった人の思いが凝縮されています。お互いが尊敬できる関係とは、お客さんと作り手がより近い距離にいるからこそ実現できると知りました。

貴重なお話を大変にありがとうございました。


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